第11回2015年5月14日放送
さて、具体的に雨漏りを調査するということですが。我々が現地調査の為にお客様のお宅に伺って、一番ホッとするのが、屋根瓦が飛んでいるような時です。または屋根が破損しているなど、どこから見ても、雨漏りの原因がはっきりしている。そういう時は、お客様からは怒られてしまうかも知れませんが、調査する側からするとラッキーなケースです。それというのも、こういったケースはそう滅多にあることではなく、実際は雨漏りしているお宅に伺って、すぐに原因がコレだと突き止められることの方が少ないくらいです。我々専門家が調査をしてもその場で100%これだと突き止めることは意外に少ないのが現状で、「これこれをすると、雨漏りが直ります」と言い切ってしまう業者さんには注意が必要です。
では、どのように雨漏りを解消するのかというと、調査の結果から推測や仮説を立てて、対処しつつ様子を見ながら、いくつかの可能性を消去法でつぶしていくという作業になります。恐らくココだろう、と一番可能性の高いものを推測し特定することを繰り返していくわけです。その際にはひとつひとつ、費用対効果を考えて試していくことが、現実的な対策であると考えています。
ここで一番大事な事は、これはお客様ではなく我々業者側が心得ておかなくてはならない事なのですが、一番費用がかからないもので、一番効果がありそう、すなわち可能性の高いモノから試しに施工していくという事です。雨漏りの処置やリフォーム工事で一番大事なことが費用対効果を念頭に置いた施工です。ひとつずつ、可能性が高くて費用のかからないものから施工していきます。ただしその際には「これで100%止まるとは言えません。とにかくやってみましょう。これで止まらなかった次はこれをやりましょう。」とその段階、段階で、費用をはっきりと明示しながら施工していくことが、我々がするべきことではないかなと考えています。逆に言うと、そのようにしか、出来ないことが多いのが雨漏り修繕なのです。
ここでひとつ注意していただきたいのが、一般的な業者だと、誰が調査したかで修繕の方法が変わってきてしまうことです。瓦屋さんは瓦を替えましょうといい、塗装屋さんは塗装で大丈夫ですよという。これは大変おかしなことで、本来なら「この原因だったら、瓦の葺き替え」、「この原因だったら塗装」…と、原因が違えば修繕方法も違ってくるはずです。しかし、自社の利益のみを追求する業者にとって、原因はどうでもよいのです。瓦を替えるお客さんになってもらうこと、塗装をしてもらうお客さんになってもらうこと、それが彼らのような業者にとっての目的になってしまっています。もうひとつ注意してほしいのが、こういったことは特段の悪意のある業者に限った話ではないということです。これは何も悪徳業者による限定的なケースではなく、一般的な業者や工務店、大手ハウスメーカーも、選択肢があれば利益の高い方を提示する、またはその選択肢も、きちんとした調査やまともな見積もりによって生まれた選択肢ではないという事が横行していることに、そろそろ消費者の方たちも気づいてほしいと思います。
実は、そういった家をきちんと修繕するという立場にたった、業者が大変少ないのが業界の現状です。前述した、構造上、雨漏りするに決まっている住宅が増えてしまっているのも問題ですが、ふつうに家のメンテナンスについて相談できる業者が少なくなってしまっているというのも大きな問題のひとつと言えるでしょう。
ではどうしたらよいのかという話になりますが、消費者の方が業者をプロや専門家だと思い込んでしまうことがとても危険なのです。じゃあ専門家って一体なんなんだという話になってしまうのですが。家の状況をしっかり見ながら、同時にそれにかかる費用を踏まえて、対策を一緒に考えていく。それを素人の方にわかるように説明していく。それがきちんと出来ることが専門家だと言えるかどうかだと思います。
それがきちんと出来る業者に出会うこと。それがきちんと出来る業者かどうかを見極めること。このふたつが重要になってきます。これは雨漏り修繕だけでなく、家全般のメンテナンスでいえることですが。
特に近年増えている、屋根勾配の小さい住宅の場合の雨漏りや、サイディング壁がゆえに起こる雨漏りなどは、対処療法でしか処置できない場合も多々あります。構造的な欠陥といっても過言ではないと思いますが、原因が住宅そのものの構造である限り、今ある雨漏りをしっかりと止めたとしても、今後数年経てばまた同じことが起こりうるわけです。こういったことは、今後新築を建てる予定の方には特に、どうかしっかりと覚えていてほしいと思います。デザイン性がとても高く坪単価の高い住宅で、雨漏りや結露に悩まされている家を何件も見てきました。伝統的な家でももちろん雨漏りはありますが、デザイン性重視の家の方が長期的に雨漏りに悩まされ改善しにくいという違いがあります。その分、費用もかさんでしまう傾向にあります。
雨漏りの相談に限らず、リフォームを業者に相談される際は、自分は素人だからなどと思わずに業者と関わることです。専門家と素人の垣根なんて、基本的にはありませんから。納得のいくまで聞くという、少しの労力をかけていただきたい。または、お金がない、お金をかけたくないといいながら、お金さえ払えば全て解決できるのではなかろうかといった、安易な考え方も大変危険です。
僕ら業者の側が言うのは失礼かも知れませんが、お客様には少し労力を払っていただきたいと考えています。大切な家の為ですから。
いま実際に雨漏りにお困りの方は、どういったときにどこからどのように漏るのかを記録しておくとよいかもしれません。その情報をもとに、実際の屋根の形状や使用している建材、築年数や劣化状況、軒の手幅や立地条件など、専門家の目から総合的に見て原因を突き止めるお手伝いをし、その対策を講じるのが、我々プロの仕事ではないかと思います。