屋根からの雨漏り
相変わらず…「屋根からの雨漏り」
屋根勾配が小さい家は雨漏りリスクが上がる!!
雨漏りの原因は、構造的な問題が原因かどうかが重要なポイントとなります。
まず、屋根の構造について、お話ししたいと思います。
屋根勾配というのは屋根の傾きの度合いのことです。その度合いは、屋根材の種類と形状や、地域の平均風速、降雨量、積雪量などの気象条件を考慮して決められるのが一般的です。
しかし、屋根の傾きは住宅の為にも、住む人間の為にも、ある程度確保しておきたいものです。
昨今では、屋根勾配の小さい住宅が大変増えているのですが、雨漏りにお悩みのケースで多いのが、屋根勾配の小さいお宅と言い切ってしまってもよいと思います。
屋根勾配が大きいことのメリットのひとつは、屋根に傾斜がつくことにより、屋根裏空間が広くとれて、その分住宅の断熱効果が上がることです。
たとえば夏の晴れの日中、屋根は太陽に照らされ続けています。僕らは屋根に上がることがありますが、夏は火傷するくらい屋根材が熱くなっています。屋根裏の空間が狭いと、暖まった空気はそのまま生活空間に影響してしまいます。夏、1階より2階の方が暑いというお宅は、屋根勾配が小さいお宅が多いでしょう。
もうひとつのメリットは、最大のメリットですが、屋根勾配を大きくすると、屋根・住宅の耐久性が高まることです。特に、雨漏りのリスクは圧倒的に低くなります。屋根勾配が大きい方が雨水が流れ落ちやすくなり、雨水が屋根に滞留する時間が短くなるので、屋根材の塗装はがれや苔の発生などを遅らせることができます。
また雨水が屋根に滞留する時間が短いので、瓦の下にあるルーフィングや野地板の腐食による雨漏りの危険性はとても低くなります。屋根勾配が小さいと、傾斜が緩い為にどうしても雨水の滞留時間は長くなります。
その結果、瓦の傷みやルーフィング・野地板など屋根材は腐食しやすくなり、傷みは早く進んでしまいます。
従来、雨の多い日本では屋根勾配は4寸勾配とられている住宅が主流で、最低でも3.5寸勾配は必要だという考え方でした。これは当たり前のことなのですが、当たり前のことが全く無視されている、考えられていないというのが住宅業界の現状です。
なぜ最近の住宅は屋根勾配が小さいお宅が多いのでしょうか?
この業界に於いて常に言えることですが、家を建てる業者側の理由と言い切ってよいかと思います。住む人の為とか、家の為とか、そういうキャッチフレーズはよく見かけますが、全く逆です。
良心的でない業者の気持ちになって考えてみるとよくわかるのですが、なるべく原価を安く抑えて安普請の家を作るとき、屋根勾配は大きくつけたくありません。
なぜなら、細い柱や細い梁の住宅では、屋根勾配をもたせず緩やかな屋根にして軽くしておきたいのです。
同じ広さの住宅で比べると、屋根勾配を大きくつけた場合と、屋根勾配をつけない場合と、屋根面積が変わってきますし、体積も変わります。底辺が同じ長さの三角形で、頂点の高さを変えると、二辺の長さが変わります。これと同じことで、屋根勾配を大きくつけた場合は、勾配をつけない場合より屋根面積が広くなり、屋根材の重さが増します。
屋根の重さが増すことはデメリットといえばいえないこともありませんが、必要な材料の重さですので、それらを支えられる土台をしっかりと作ればよいのです。
しかし、土台をしっかり作るとなると手間も材料も当然増えます。
「屋根は軽い方が耐震上安心です」といって、大手ハウスメーカーはこぞって屋根勾配の小さい緩やかな屋根にしています。消費者も、「耐震」と言われると、非常に受け入れやすい心理になってしまうようです。
土台や構造を強くする努力はせず、屋根勾配を小さく緩くして軽くするのは、ほんとうに耐震のためでしょうか?
実は、家の値段というのは、坪単価で計算するため、1階と2階を横に並べて上から見た広さで計算されます。面積で表示され、体積表示される事はまずありません。
屋根勾配を大きくすればするだけ、屋根の面積は広くなり更に小屋裏の体積も増える分、使用する瓦や木材などの材料も手間も増えますが、坪単価の計算では真上から見た面積での計算なので、値段に反映されません。
屋根に勾配をつけると、業者にとって、損になるのです。このような、業者側の本音の結果、屋根勾配が緩やかな住宅が増えているのです。決して「耐震のためには屋根を軽くする方がいい」という言葉に惑わされないでほしいと思います。
また、1階、2階のどちらから雨漏りしているかで我々の対処・アドバイスも変わってきます。
1階から漏っている場合は比較的対処しやすいです。1階部分に雨漏りが見られる場合、9割以上が2階の外壁と1階の屋根の接合部分から漏っているケースです。このケースの場合、瓦を替えても当然雨漏りは解消しません。
これはむしろ塗装の問題で、瓦屋根部分と壁の水切りの接合部分をきちんとシーリングして上から塗装をかけるという施工で改善できます。こういったケースであれば費用対効果も高く、雨漏りを防ぎやすいケースであると言えます。
一番大きなポイントは屋根勾配の問題です。
近年主流になっている、屋根勾配が小さい、すなわち屋根の傾斜が緩い住宅で、本来ならしなくてもよい雨漏りが多く生じていると言い切っても過言ではありません。
具体的に雨漏りを調査するということで我々が現地調査の為にお客様のお宅に伺って、一番ホッとするのが、屋根瓦が飛んでいるような時です。
または屋根が破損しているなど、どこから見ても、雨漏りの原因がはっきりしている場合です。
そういう時は、お客様からは怒られてしまうかも知れませんが、調査する側からするとラッキーなケースです。それというのも、こういったケースはそう滅多にあることではなく、実際は雨漏りしているお宅に伺って、すぐに原因がコレだと突き止められることの方が少ないくらいです。
「これこれをすると、雨漏りが直ります」と言い切ってしまう業者には注意が必要です。
では、そのような原因がはっきりとわかりにくい状況で、どのように雨漏りを解消するのかというと、調査の結果から推測や仮説を立てて、対処しつつ様子を見ながら、いくつかの可能性を消去法でつぶしていくという作業が必要になります。
恐らくココだろう、と一番可能性の高いものを推測し特定することを繰り返していくわけです。その際にはひとつひとつ、費用対効果を考えて試していくことが、現実的な対策であると考えています。
この一番費用がかからないもので、一番効果がありそう、すなわち可能性の高いモノから試しに施工していくという事は、これは実はお客様ではなく我々業者側が心得ておかなくてはならない大切な事なのです。
雨漏りの処置やリフォーム工事で一番大事なことが費用対効果を念頭に置いた施工です。
原因のはっきりしない雨漏りのケースでは、ひとつずつ、可能性が高くて費用のかからないものから施工していきます。
ただし、その際には「これで100%止まるとは言えません。とにかくやってみましょう。これで止まらなかった次はこれをやりましょう。」と、その段階、段階で、費用をはっきりと明示して施工の道筋を示しながら施工していくことが、我々プロがするべきことではないかなと考えています。
逆に言うと、そのようにしか、出来ないことが多いのが雨漏り修繕なのです。
雨漏りは屋根だけの問題ではない
1階、2階のどちらから漏っているかで我々の対処が変わってくるとお話ししました。
実は雨漏りは最上階の屋根からだけ起きるわけではありません。
軒の出幅の浅い住宅などでは外壁から浸水している場合も多く、またベランダを設置している側の壁面、特に一階の屋根を陸屋根にしてベランダとしている場合などにも多く起こります。
屋内側のどこに水がしみてくるか、また水滴が落ちてくるかという現象を見るだけでは、浸水の入り口、また経路は掴めません。しかし、調査をすれば原因が大方わかることもあり、はっきりと分からなくともある程度の推測を立てることができます。
「壁からではないだろうか」「屋根からではないだろうか」といったことを推測することが我々プロは経験上出来るわけです。
更にその調査の結果をもとに、むやみに処置を試していくのではなく、効果的に、戦略的に、可能性の高さと費用をハカリにかけながら、施工していくという道筋を考えられるのも、プロならではです。
しかしすっかり改善できるまでにどのくらいの期間、どのくらいの費用がかかるかの見通しがつきにくいというのも雨漏り修繕の悩ましい所でもあります。
消費者の方の心理としては、すぐに直したい、全部解消したいと思っておられるのは当然です。
そこで「一発で直しますよ」という業者に施工を頼んでしまい、施工後数年も経たずにまた雨漏りしてしまう。
当社にはこういった「雨漏りの修繕を他社でしたが直らなかった」という事で相談に来られるお客様が大変多くいらっしゃいます。
ここでひとつ注意していただきたいのが、一般的な業者だと、誰が調査したかで修繕の方法が変わってきてしまうという事です。
瓦屋さんは瓦を替えましょうと言い、塗装屋さんは塗装で大丈夫ですよと言う。
これは大変おかしな話で、本来なら「この原因だったら、瓦の葺き替え」、「この原因だったら塗装」…と、原因が違えば修繕方法も違ってくるはずです。
しかし、自社の利益のみを追求する業者にとって、原因はどうでもよいのです。
瓦を替えるお客さんになってもらうこと、塗装をしてもらうお客さんになってもらうこと、それが彼らのような業者にとっての目的になってしまっています。
その結果、お客様は工事をしたから直ったと思っているが、根本的な解決がされていない為、多くの場合で、また雨漏りが始まってしまうのです。
もうひとつ注意してほしいのが、こういったことは特段の悪意のある業者に限った話ではないということです。
悪徳業者による限定的なケースではなく、一般的な業者や工務店、大手ハウスメーカーも、選択肢があれば自社にとって利益の高い方を提示する、またはその選択肢も、きちんとした調査やまともな見積もりによって生まれた選択肢ではないという事が横行していることに、そろそろ消費者の方たちも気づいてほしいと思います。
実はそういった、家をきちんと修繕するという立場にたった業者が、大変少ないのが業界の現状です。
前述した、構造上、雨漏りするに決まっている住宅が増えてしまっているのも問題ですが、ふつうに家のメンテナンスについて相談できる業者が少なくなってしまっているというのも、問題を大きく、また複雑にしている要因であると言えるでしょう。
ではどうしたらよいのかという話しになりますが、消費者の方が業者をプロや専門家だと思い込んでしまうことがとても危険なのです。
じゃあ専門家って一体なんなんだという話になってしまうのですが、家の状況をしっかり見ながら、同時にそれにかかる費用を踏まえて、対策を一緒に考えていく。それを素人の方にわかるように説明していく。それがきちんと出来ることが専門家だと言えるかどうかだと思います。
そういった当たり前のことがきちんと出来る業者に出会うこと。きちんと出来る業者かどうかを見極めること。このふたつが業者を選ぶ際は重要になってきます。
これは雨漏り修繕だけでなく、家全般のメンテナンスでいえることですが。
やるべき事の優先順位を、つけることができる業者を選べば、
費用もグッとおさえられる
こうすると、すべて解決つきますという方法は、実は建築の場合は非常に少ないのです。
しかし、ほとんどの業者が言うのが「これさえやっておけば大丈夫ですよ」という話です。そういうものに限って、数年もたたないうちに、ボロがでてしまう。安易な近道、特効薬というのは建築には無いのです。
やはり根本的に、伝統的な建築の構造は、なぜ何千年も歴史があるのか。この国の気候風土に合った工法や、材料は、そんなに簡単に取替えがきくものなのか。そういった事に、消費者ひとりひとりが思いをはせてほしいと思います。
特に近年増えている、屋根勾配の小さい住宅の場合の雨漏りや、サイディング壁がゆえに起こる雨漏りなどは、対処療法でしか処置できない場合も多々あります。
構造的な欠陥といっても過言ではないと思いますが、原因が住宅そのものの構造である限り、今ある雨漏りをしっかりと止めたとしても、今後数年経てばまた同じことが起こりうるわけです。
こういったことは、今後新築を建てる予定の方には特に、どうかしっかりと覚えていてほしいと思います。
デザイン性がとても高く坪単価の高い住宅で、雨漏りや結露に悩まされている家を何件も見てきました。
伝統的な家でももちろん雨漏りはありますが、デザイン性重視の家の方が長期的に雨漏りに悩まされ改善しにくいという違いがあります。
その分、費用もかさんでしまう傾向にあります。
疑問に思ったことは、まず詳しい人に聞いてみる
雨漏りの相談に限らず、リフォームを業者に相談される際は、自分は素人だからなどと思わずに業者と関わることです。専門家と素人の垣根なんて、基本的にはありませんから。
納得のいくまで聞くという、少しの労力をかけていただきたい。
または、お金がない、お金をかけたくないといいながら、お金さえ払えば全て解決できるのではなかろうかといった、安易な考え方も大変危険です。
僕ら業者の側が言うのは失礼かも知れませんが、お客様には少し労力を払っていただきたいと考えています。大切な家の為ですから。
また、納得するかどうかも大事です。よくあるのが、疑問に思ったから質問をした。しかし説明がよくわからなかった。けど、「相手は専門家であるから、正しいことを言っているのだろう」とか「質問に一生懸命答えてくれた」という姿勢だけで契約してしまう人がいます。
後で「実はあの会社のいう事はよくわからんかった。やっぱりおかしかったんだ」と後悔して当社に相談に来られるのです。納得するというのは、本当に大事です。
いま実際に雨漏りにお困りの方は、どういったときにどこからどのように漏るのかを記録しておくとよいかもしれません。
その情報をもとに、実際の屋根の形状や使用している建材、築年数や劣化状況、軒の出幅や立地条件など、家に詳しい者としての目から総合的に見て原因を突き止めるお手伝いをし、その対策を講じるのが、我々プロの仕事ではないかと思います。