第14回2015年6月4日放送
亀裂から雨水が浸透している、とのことで壁面からの浸水にお困りのようですが、実は雨水の浸入は、最上階(屋上)からの浸水である可能性が一番高いです。屋上から入った水の出口として壁面から室内に流れこんでいると考えられます。そこで、まず疑うのは、屋上の防水がきちんと機能しているかどうかです。
鉄筋コンクリート住宅やビルの屋根は、いわゆる陸屋根といって、勾配のない平らな屋上となっています。そのような屋上面に現在一般的に採用されている「シート防水」は、市や県の指定業者の防水業者でもよく施工され、公共工事などでも使用されている工法ですが、当社ではおすすめしません。防水の工法については、第12回の放送で詳しくお話した通りですが、「シート防水」は欠点だらけであり、遅かれ早かれ雨漏りは避けられないという事を強調しておくにとどめておきたいと思います。
屋上面から水が浸入していたのが始まりだったとしても、流れ出た先の出口も、新たな浸水ポイントとなってしまいます。厄介なのは、水の出口となるところは常に湿気ているためひび割れや爆裂が起きやすくなり、水の入り口にもなってしまうということです。その結果、壁から浸水していると思われるような状況になっているケースがよくあります。しかし壁からの浸水は、実は二次的な浸水であるという事がほとんどなのです。
壁からの浸水をふせぐために亀裂を塞いでも、もともとの浸入口を塞がないことには、意味がありません。そのため、水の浸入経路を調査して特定し、その原因を取り除く必要があります。
処置としては、屋上の防水をきちんと機能する状態にした上で、壁面の補修と塗装による保護をして、これ以上の浸水を防ぐという方法が有効かと思います。屋上の防水がシート防水であれば、塗膜防水にやり替えるということが必要です。
こういった事を理解していない業者の場合、壁面からの浸水であると相談すると、「壁面を塗装すれば大丈夫ですよ」と塗装してしまう事があります。お客様が「うちは最上階は全然雨漏りしていない」「壁からの雨漏りに困っている」と言うと、屋上に上がって調査もせず鵜呑みにしてしまい、屋上の防水は大丈夫なんだと思い込んでしまうのですね。
住んでいる方からすると、確かに最上階に雨漏りがなければ屋上防水は大丈夫なんだと思ってしまうのも無理はないことです。下の階の壁面から室内に水が漏っていれば、壁面からの雨漏りかと思うでしょう。ただ、業者はプロですからお客様の話をお聞きした上であらゆる可能性を考えて、最上階に雨漏りがないと聞いても屋上に上がらなければなりません。なぜなら先ほども申し上げたように、壁面からの雨漏りというよりそれは単なる水の排出経路であることが多いからです。元は屋上から入った水が鉄筋を錆びさせて膨れた為に亀裂が生じ、その亀裂が水の経路となり、亀裂を通った水が出口を求めて壁面の亀裂から染み出てきているという可能性が一番高いという事をプロならば当然、経験や知識で知っておかなければいけません。可能性が高いものをまず一番に疑い、屋上の防水が機能しているかどうかを調査するのが、こういったケースの鉄則と言えます。
当社ではこういったご相談をいただいた場合、まず屋上の防水が機能しているかどうかを調査します。屋上の防水をしっかり機能させる処置をしたのち、壁面の亀裂などの補修、その後壁面を保護する為の塗装を行うという順序になることがほとんどです。
僕らがこういったケースで防水工事をする場合「壁面から水が入っているような大きな亀裂がありますが、これは屋上が原因です」と、メカニズムを説明することが最初の仕事となります。